この経緯で主要な広場が整備され、現在われわれが見るようにオベリスクが再設置されたのである。その最初のプロジェクトが、サン・ピエトロ広場のオベリスクだった。建築家ドメニコ・フォンターナがプロジェクトの任に当たり、1586年に据え付けが完了した。シクトゥス5世の命を受け、フォンターナがローマに再配置したオベリスクは、他にもポポロ広場、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂といったローマの要所を占める。以降、歴代の教皇の命によってオベリスクが都市景観にアクセントを添えるように置かれた。ナヴォーナ広場に建つオベリスクは、バロックの巨匠ジャン・ロレンツォ・ベルニーニによる泉水の中央にそびえている。古代エジプトの象徴であったオベリスクは、まったく異なる文脈のなかで、キリスト教都市ローマを彩ったのである(…)
[『積算資料』2010年7月号草稿の一部を抜粋]